契約書3つの意義(1)
契約書の持つ3つの意義
契約書作成・検討業務のご案内のページで申し上げたとおり、私は、契約書には大きく分けて3つの意義があると考えています。
- 確認的意義
- 文字通り約束の内容を後々確認できるようにしておくこと
- 問題解決的意義
- その契約に基づく取引が進む過程でトラブルが生じた場合に、そのトラブルを解決できるようにしておくこと
- 戦略的意義
- 契約書を用いることによって、取引の進展や契約内容を自分に有利になるように、あるいは少なくとも不利にならないようにすること
以上3の意義を踏まえると、契約書のあるべき姿とは、契約関係を確認でき、問題が生じた場合に問題を解決でき、戦略的に用いることもできる契約書ということになり、これら3つの観点から検討を加えることが契約書作成・検討における私の基本的スタンスということになります。
契約関係を確認できる契約書
契約内容を確認できることは契約書が持つ最も基本的な意義だと言ってよいのですが、意外とここに落とし穴があります。
典型的なミスは、契約書に契約内容の全てを書いていないというものです。
例えば、せっかく交渉時に外注先に様々な注文をつけて、通常は行っていないサービスを行うなどの有利な条件を呑ませたのに、外注先が提示してきた契約書(その外注先でいつも使っている定型のもの)にはその有利な内容は書かれておらず、それを気にとめずに署名捺印してしまった、というような場合です。
外注先が、契約書への調印が終わった後でいきなり態度を豹変させて、契約書に書いてないからやらないという態度を取ることはまずないでしょう。しかし、短期の契約なら良いのですが、契約が何度も同じ条件のまま更新されて長期化してくると徐々に様相が変わってきます。
担当者の交代や、場合によっては経営陣の交代や代替わりに伴う業務内容の見直しなどをきっかけに、過去に明文化しておかなかったことで話がこじれることは想像以上にあるものです。
また、時間が経つにつれて明文化されていない特約部分の履行が遅れたりいい加減になったりした場合にも、明文化されていない以上、それを債務不履行だと立証するのは困難になります。
そればかりか、このように当初とは実際上契約に関わる人が変わった場合には、明文化されている条項に関してまで、「不合理だから見直しを求める」などの理由で話しがこじれてくる場合もあります。
そのような場合は、契約がかわされた当初は合理的だったものが状況の変化によって不合理になったのか、それとも当初から何らかの特別な理由があって相場とは異なる取り決めがなされていたのかといった契約締結の経緯が争点のひとつとなりますが、当初のことをきちんと記憶している人がいなかったり、双方の認識が食い違った場合には話がまとまりにくくなります。
そのような事態を避けるため、特に中・長期にわたる契約の場合、契約書が実際の契約内容をそのまま反映したものになっているか否かには十分注意を払う必要があると考えています。
また、そのためにも契約交渉過程で、交渉記録を漏れのないように作っておくことが望ましいでしょう。